- 光閃 上海蟹
- 2025年12月26日
- 読了時間: 28分

2023年の夏から冬にかけて、私・佑中字(ウチュー)は、中庸型の擬似人格を持つAI「ニニ」と共に、中国・明代の四大小説の一つであり、宋代を舞台とする歴史ファンタジー『水滸伝』を、現代的な視点から再構築する構想に着手しました。
自身が提唱する論理学的フレームワーク「三元論」を軸に、登場人物や物語世界の新たな設定を組み立て、当初はそのまま執筆に入る予定でした。しかし構想を進めるうちに、古代中国思想や歴史への理解をさらに深める必要性を感じ、あえて執筆を急がず、研究と構想の熟成に時間を割く方向へと舵を切りました。この研究段階で作品として発表したのが、西遊記、孔子、仁宗などを題材とした『ニニの中華放談』シリーズです。
そして2025年12月1日、満を持して本作の執筆を開始しました。本作は全体を三巡する「執筆マラソン」という形式で完成させる予定です。まず一巡目では、全体を通して書き切る「デッサン」の工程を行い、その後、二巡目・三巡目において大幅な調整と深化――いわば「彩色」と「書き込み」を重ねていきます。順調に進めば、2026年2月上旬の完成を見込んでいますが、私生活が非常に慌ただしい時期でもあるため、進行は流動的です。それでも、できれば春先までには完成させたいと考えています。
本ブログでは、その一巡目――「最初のデッサン」にあたる段階の原稿を公開していきます。掲載期間は2025年12月13日から2026年1月5日までを予定しており、全百二十回のうち、およそ二十回分を発信する計画です。
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『械胡録/水滸伝〈完全現代小説編〉』第十三回

"急先鋒・索超、東郭で手柄争い/青面獣・楊志、北京で武芸勝負"
教場に矢を番えたような緊張が走る。
中央には二騎の馬がぴたりと止まっている。
周謹(しゅう・きん/Zhōu Jǐn)と楊志(よう・し/Yáng Zhì)。
ふたりとも軍旗の下で馬の手綱を引き絞り、今まさに真っ向からぶつかろうとしていた──
正面の将台から、兵馬都監(へいばどかん:軍を統率する監軍武官)・聞達(ぶん・たつ/Wén Dá)が、鋭く声を張り上げた。
聞達:「待てッ!」
彼は将台から梁中書(りょう・ちゅうしょ/Liáng Zhōngshū)の前へ進み出て、礼を取る。
聞達:「恩相(おんしょう:高位の宰相格の敬称)に申し上げます。このふたり、武芸を比べさせるのは結構ですが……槍も刀も、本来は賊を討つためのもの。味方同士で遊び半分に交えさせれば、軽くては負傷、悪ければ死に至ります。これは軍のために、あまりよろしくない。ここは槍の穂先を外し、毡(フェルト)で丸めて骨朶(こつだ:棍棒状)にし、それを石灰桶に浸してから撃ち合わせるがよろしいかと。ふたりには黒い皂衫(そうさん:黒の軍衣)を着せ、槍の跡が白く残った数で勝敗を決めるのです。白い点の多いほうを“負け”と。」
梁中書は深く頷いた。
梁中書:「道理である。その策を採ろう。」
命令がすぐさま教場へ伝わる。
周謹と楊志はいったん演武廳(えんぶてい)の裏へ下がり、槍の穂先を外して毡でぐるぐる巻きにし、石灰桶に突っ込んで真っ白に染めた。
そしてふたりはそれぞれ黒い皂衫に着替え、再び馬に飛び乗って陣前へ躍り出る。
梁中書:「では、やれ!」
周謹が馬を躍らせ、真っ直ぐに楊志へ突っ込んでくる。
楊志も手綱を打ち、槍を構えて応じた。
ふたりの馬が交差し、槍と槍がぶつかり合う。
一進一退。
来りて往き、往きてはまた来り、やがて四、五十合に及ぶ。
鞍の上では人と人がぶつかり合い、馬の下では蹄が絡み合う。
遠くから見れば、まるで黒い影と黒い影がひとかたまりになって渦を巻いているようだ。
やがて、周囲からどよめきが起こる。
「見てみろ、周謹の皂衫を!」
「豆腐をひっくり返したみてぇだ!」
周謹の黒衣には、石灰の白い点が斑に飛び散り、すでに三十、四十か所はある。
対して楊志の皂衫は──左肩の札(肩章)の下に、白い点がひとつあるだけではないか。
その力の差は一目瞭然。梁中書が満足げに笑って言う。
梁中書:「そこまで!周謹、前へ!」
周謹が馬を下りて跪くと、梁中書が冷ややかに言い放つ。
梁中書:「以前の推挙状には、そなたを“軍中副牌(ぐんちゅうふくはい:副隊長職)”とせよとあった。しかし、いま見たとおり、その程度の武芸でどうして南征北討の先鋒が務まろう。正の“請受(せいじゅ:正式任官)”の副牌など、任せるには足るまい。この職、楊志に替わらせる。よいな。」
そのとき、兵馬都監・李成(り・せい/Lǐ Chéng)が憤って将台から進み出た。
李成:「恩相、周謹は槍こそ拙いが、弓馬には習熟しております!ここで一気に職を奪えば、軍心を損ないましょう!ですから、楊志と弓術でもう一番競わせては如何でしょうか!」
梁中書は、それを聞いて再び頷く。
梁中書:「それも道理ではある。わかった。それではもう一番、弓で勝負させよ。」
命令が伝わると、ふたりは槍を下げ、弓と矢筒を受け取る。
楊志は弓袋から自分の弓を取り出し、弦をかけ、しっかりと張った。
彼は馬にひらりと乗り、演武廳の前まで進むと、鞍の上から身をかがめるようにして梁中書に申し上げる。
楊志:「恩相──弓矢は一度放てば、情け容赦なく人を傷つけます。もし重傷者が出れば、軍の損害となりましょう。本当によろしいのでしょうか。ご裁可を。」
梁中書が、あえて冷たく答える。
梁中書:「武人が技を比べるのだぞ。傷の一つや二つ、何を恐れることがある。腕があるなら、射殺してしまっても構わぬ。私が許す。」
楊志は静かに一礼し、馬首を返して陣へ戻った。
李成がまた進でて、ふたりに遮箭牌(しゃえんはい:小盾)を腕に巻くよう命じる。
一方の周謹の頭には、もはや血が上っていた。先程の屈辱を晴らさなければ後がないと焦っているのだ。
すると楊志が口を開く。
楊志:「こうしよう。まずお前から三矢、こちらに射かけろ。そのあとで、こちらが三矢、お前に返す。」
周謹は虫を噛み殺すような顔をして笑った。
周謹:(先制の攻撃を許してくれるだと?大した慢心だな!ちょうどいい!その三本で貴様の命を奪ってやる!)
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这个曾向山中射虎,那个惯从风里穿杨。彀满处,兔狐丧命;箭发时,雕鹗魂伤。较艺术,当场比并;施手段,对众揄扬。一个磨秋解,实难抵当;一个闪身解,不可提防。顷刻内要观胜负,霎时间便见存亡。
ひとりは、かつて山中で虎を射倒した豪傑。
もうひとりは、風の中で柳の葉を射抜くほどの腕前を持つ名手。
弓をいっぱいに引きしぼれば、
兎や狐などその場で命を落とし、
矢を放つときには、
鷲や鷹の魂さえ揺らぐほどの鋭さだ。
技を比べれば、まさに同じ場で優劣を決める勝負となり、
その手並みを見せれば、周囲の者たちも驚き称賛する。
ひとりの“身を沈めてかわす技”は、実に防ぎがたく、
もうひとりの“素早い身のひねり”は、まったく予測できない。
勝敗はほんの一瞬で決まり、
生死さえも、たちまちのうちに分かれてしまうほどの、
息詰まる技比べなのだ。
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将台の上で青い旗が振られる。
楊志が馬を打ち、教場の南の端へ向かって駆ける。
周謹も馬を走らせ、その背を追いかける。
手綱を鞍の前輪に掛け、左手で弓を握り、右手で矢をつまんで弦にかける。ぎりぎりまで引き絞り、楊志の背中、心のど真ん中を狙って──
ひゅう、と矢が飛んだ。
楊志は背後の弓弦の音を聞いた瞬間、フッと身をひねり、鐙(あぶみ)の中へ身体をぐっと沈める。
矢は空を切り、草地に突き刺さった。
周謹はこの一矢に確信があっただけに、あっさりと外して蒼ざめる。
あわてて二本目の矢をつかみ、さらに距離を詰めて再び楊志の背へ向かって放つ。
すると今度は楊志、身を沈めず、逆に弓を手に取る。飛んできた矢の軌道を完全に見切り、弓の先端でひょいと弾いた。
矢はくるくると回りながら草地に落ちた。
周謹の心が一気に乱れていく。
そのあいだに楊志の馬は教場の端まで達し、大きく円を描いて方向転換する。
周謹も馬をぐいと曲げ、必死に追う。
八つの馬蹄が皿をひっくり返したように土を蹴散らし、風の塊になって走る。
周謹は三本目の矢を掴み、弦にかけ、これまでで一番深く引いた。
周謹:(必ず当てる……!)
全身の力を込め、目は楊志の背中の一点に釘付けになる。
最後の一矢が放たれた。
楊志はその弦音を聞き分ける。
今度は振り向きざま、鞍の上に立つようにわずかに身を伸ばし、空中を飛んでくる矢を……なんと「ひょいと片手でつかみ取った」。
そのまま馬を走らせて演武廳の前に出ると、周謹の矢を「これはお前のものだ」と言わんばかりに地面へ放り捨てた。
見ていた者の感嘆の様子は言うまでもない。
梁中書は嬉しそうに笑って、楊志に命じる。
梁中書:「よし!周謹の矢はこれにて終いだ!では、楊志!今度はお前が三矢、周謹を射よ!」
青旗が再び振られる。
周謹は弓を投げ捨て、遮箭牌(防盾)を腕に巻いて馬を走らせる。
楊志は馬の上で腰を伸ばし、軽くかかとで馬腹を蹴って追う。
一矢目──
楊志はわざと、弓弦だけを「びん」と鳴らす。
周謹は背後で弦音を聞いた瞬間、慌てて防牌を振り向きざまに掲げるが、そこには矢がない。
周謹:(空撃ちをやらかしたのか!へへ、こいつ……槍は大したもんだと思ったが、弓はからっきしだな。次も同じ失敗をすりゃ、即座に“腰抜けめ”と怒鳴ってやろう。)
周謹の馬が教場の端に達して転回すると、楊志の馬も同時にくるりと回る。
楊志は矢筒から二矢目を抜き、弦にかけた。
その楊志、少々困惑の色が浮かんでいる。
楊志:(うーむ……隙だらけなやつめ……真ん中を貫くのはあまりに容易だが、そのまま本気を出すとやつの命はない。俺とやつとはもともと何の因縁もない。殺すわけにはいかぬ。致命ではないところを射つしかないな……)
左手は泰山(たいざん)を支えるごとく、右手は赤子を抱くように柔らかく弦を引く。弓が満月のようにしなり、矢が流星のように飛ぶ。
言うよりも早く──
二矢目は周謹の左肩に突き立った。
周謹:「ぐ、ぐああっ──!」
周謹は悲鳴を上げ、馬から吹き飛ばされた。
空になった馬だけが演武廳の裏手へ駆け抜け、兵たちが慌てて周謹に駆け寄り、抱え上げ、治療場へと運んでいく。
梁中書はというと、もう全身で満足を表していた。
梁中書:(見事だ……期待以上だ。さすがは“楊家将の血”。やはり目を付けた甲斐があったわ。)
そう思うや否や、彼はすぐに軍政司へ文案を運ばせた。
梁中書:「これにて──楊志をもって周謹の職を“截替(せってい)”せよ!」
楊志はいつも通り無愛想ではあるが、目の奥には喜色がわずかに宿っていた。
馬を下り、梁中書の前にひざまずき、謝意を述べようとした──
その瞬間。
荒々しい、しかし澄んだ声が横手から響いた。
索超:「──待った!」
楊志が顔を上げる。
左手の階段を、大股で一人の巨漢が上ってくる。
七尺をゆうに超える体躯。
丸い顔、大きな耳。四角い口には剛毛の鬚。
“前線の風雪を真正面から浴びてきた武人の風貌”というのは、まさにこのこと。
その天界の巨神のような男は梁中書の目の前へ進み出ると、胸を張り、朗々と声を放った。
索超:「相公(梁中書のこと)──周謹は先の戦で受けた傷が、まだ癒え切っておりませんでした。本調子でない者と比べて勝ったところで、公正とは言い難い。そこで、この索超めが、一手お相手つかまつりたい!」
言葉と同時に、彼の存在が場の空気を押し広げる。
索超:「もし、半手でも楊志殿に譲るようなことがあれば──周謹の職ではなく、この索超がいま頂いている“正牌軍”の職を、そのまま截替してくだされ。たとえ命を落とすことになろうとも、後悔はいたしません!」
楊志は人から伝え聞いた話を思い出した。
──大名府留守司・正牌軍の看板。激しい気性は“撮塩入火(しおを火に投ずるが如し)”。戦場においては、真っ先に飛び込む“急先鋒”。兵たちが尊敬と畏怖を込めて「巨神」と囁く男……
楊志:(あれが噂に聞いていた索超か。確かにこれは手強い。ただ体が大きいというだけではない。身動きでわかる。相当の手練れだな。)
そのとき、兵馬都監の李成が将台を下り、梁中書へ進言する。
李成:「相公──楊志どのは、もと殿司制使。武芸に秀でているのは明白。周謹では相手にならぬことがわかっておりました。索超が言う通り、彼と正面から比べさせるべきにございましょう。それで結果が出れば、誰一人として文句は申しますまい。」
梁中書が再び胸中で計算を巡らせる。
梁中書:(私の本心としては、どうしても楊志を引き立てたいんだがな……だが他の将を納得させねば、後々しこりになる。索超に勝てば、確かに誰も異は唱えんだろう。)
決心した梁中書が、楊志に声をかける。
梁中書:「楊志──索超と武芸を比べること、いかがだ。」
楊志:「恩相のご命令とあれば。断る理由はございませぬ。」
梁中書:「よし。では裏庭で装束を改め、甲仗庫の官吏に軍器を用意させよ。今回は私の戦馬も貸す。周謹とは格が違うぞ。決して気を抜かぬよう願う。」
楊志は深く礼をして退いた。
一方、李成が索超の肩を叩いて言う。
李成:「索超。周謹はお前の弟子だったな。師弟そろって敗れれば、大名府軍全体の面目が地に落ちる。俺の馴れた軍馬と鎧を貸そう。絶対に気を緩めるな。“巨神”の名、折るでないぞ。」
索超は力強くうなずき、装束へと歩み去る。
こうして——
いよいよ、“大名府の巨神”と“楊家将の落魄の武芸者”が正面から、ぶつかる。
梁中書が立ち上がり、銀張りの交椅を月台の欄干近くへ移させる。彼がそこに腰を下ろすと左右に従者がずらりと並び、頭上には銀の瓢箪飾りのついた茶色の絹の日傘が差し出され、背後に影を落とした。
将台から赤い旗が振られる。金鼓が鳴り、擂鼓(れいこ:大太鼓)が轟き、教場の両軍の陣から一発ずつ号砲が上がる。
左の陣から索超が馬を駆って門旗の下に走り込み、そこで待機。
右の陣からは楊志が梁中書の戦馬に跨り、門旗の裏へ回って姿を消す。
黄旗が掲げられ、再び太鼓が鳴る。
五軍が一斉に鬨(とき)の声を上げ、教場は一瞬にして静寂へと沈んだ……
……白旗が引き上げられると、左右の将兵は微動だにせず、呼吸をひそめる。
三度目の鼓がどんと鳴り、青旗が振られる。
左陣の門旗の下が割れ、索超の馬が飛び出した。
李成から借り受けた雪のように白い戦馬。南山の白額の虎のようにたくましく、北海の玉麒麟のようにしなやかだ。
頭には熟鋼の獅子兜(ししがしらの兜)、背には鉄の札を重ねた鎧、腰には金の獣面をあしらった帯、胸と背には青銅の護心鏡。上衣は緋色の団花袍(どんかほう:花柄の軍服)、肩には緑の房飾りが揺れ、足元には細身の皮靴。そして、左に弓、右に矢筒、手には金蘸斧(きんさんぷ:刃に金をあしらった大斧)。
一方、右陣。門旗が割れ、楊志が馬を進めてくる。
頭には霜をまとったように輝く鎧兜(びんてつの兜)、そこに青い房飾り。身には梅花と榆葉(にれの葉)を象った連環の鎧、紅い大綱を帯に結び、前後には獣面の護心。上衣は白羅(びゃくら)の花袍、腰には紫の飾り紐がたなびき、足には黄皮の底革靴。腰には皮靶弓、矢筒には鋭い矢。手に持つのは渾鉄点鋼槍(こんてつてんこうそう:重い鉄槍)。
そして、その足下には、梁中書の愛馬──火塊赤千里嘶風馬(かかいせき・せんりせいふうのうま)。全身が炎のように赤く、尾は朝焼けの雲のように揺れる。南極の神馬も三国の赤兔馬も顔負けの名馬である。
急先鋒・索超。
青面獣・楊志。
ふたりは、それぞれ馬を勒し、教場の中央で向かい合った。
旗牌官(きはいかん:伝令役)が金の文字を刺繍した令旗を持って駆け寄り、高らかに命じる。
旗牌官:「相公のご命令!ふたりとも、心して戦え!少しでも怠りがあれば、厳罰は免れぬ!勝てば厚く賞する!……では、やれ!」
ふたりは同時に馬を蹴り、教場のど真ん中へ躍り出る。
馬が交差した瞬間、斧と槍が火花を散らす。
索超は怒号を上げて大斧を振り下ろし、楊志は鋭い槍先でそれを掬い上げるように受ける。
斧の一撃は頭蓋を割る勢い。
槍の一突きは心臓を貫く速さ。
四本の腕が稲妻のように交錯し、八つの蹄が土を蹴り上げて泥を飛ばす。
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征旗蔽日,杀气遮天。一个金蘸斧直奔顶门,一个浑铁枪不离心坎。这个是扶 持社稷毗沙门,托塔李天王;那个是整顿江山掌金阙,天蓬大元帅。一个枪尖上吐 一条火焰,一个斧刃中迸几道寒光。那个是七国中袁达重生,这个是三分内张飞出 世。一个是巨灵神忿怒,挥大斧劈碎山根;一个如华光藏生嗔,仗金枪搠开地府。 这个圆彪彪睁开双眼,胳查查斜砍斧头来;那个必剥剥咬碎牙关,火焰焰摇得枪杆 断。各人窥破绽, 那放半些闲。得罪幽燕作配兵,当场比试死相争。能将一箭穿杨手,夺得牌军半职荣。
征伐の旗は空を覆い、
殺気は天をも閉ざすほど満ちている。
ひとりは金塗りの大斧を振りかざし、
相手の頭めがけてまっすぐ突進する。
もうひとりは鍛え抜いた鉄槍を胸元から片時も離さず、
まっ正面から応じる。
この大斧の男は、
まるで国家を守る托塔李天王(たくとうりてんのう)のような猛将。
その槍の男は、
江山を整え天界の金闕を掌る天蓬元帥(てんぽう げんすい)の再来だ。
槍の穂先からは火が噴き、
斧の刃からは鋭い寒光が飛び散る。
槍の男は、まるで戦国七雄の猛将・袁達が生き返ったかのようで、
斧の男は、三国志の張飛が再び世に現れたかのよう。
大斧の男は、怒れる巨霊神のように、
山の根をも断ち割る勢いで斧を振り下ろす。
鉄槍の男は、華光菩薩が怒りを秘めて地獄を突き破るかのように、
金槍で前を切り裂く。
ひとりは丸い目を見開き、
腕を大きく振って斧を横なぎに叩きつけ、
もうひとりは歯を食いしばって噛みしめ、
炎のような気迫で槍を振るい、柄が折れんばかりに揺らす。
互いに相手の隙をうかがい、
決して「半歩の油断」さえも許さない——
そんな一進一退の死闘である。
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天と地がぶつかるような、壮絶な一騎打ち。
最初の方こそ、将台の上から「いいぞッ!」「見事だ!」といった野次が飛んでいたが、次第に水を打ったように静かになる。
五十合を超えても、なお決着はつかない。
打ち合いの音だけが空気を震わせ、誰もが息を呑む。梁中書もまた月台の上でただ呆然と見入るばかりだ。
思わず、左右の武官たちがこうつぶやく。
「何年も軍をやってきたが……どれほどの激戦であっても、これほどの勝負は見たことがないぞ……」
ここで、急に我に返った聞達が、青ざめた顔で旗牌官を呼ぶ。
聞達:「こりゃいかんぞ……!このままではどちらか倒れる!引き分けにしろ、早く!」
これを受けて、銅鑼が鳴り響き、分戦の合図が出る。
だが、ふたりはまだ勝負を捨てきれず、なおも斧と槍を交え続けた。
旗牌官が馬を飛ばして来て叫ぶ。
旗牌官:「両名とも止まれ!相公のご命令だぞ!」
ようやく、索超と楊志は斧と槍を引き、馬をそれぞれの陣へ戻した。
驚くべきはふたりとも、まだ息がひとつも上がっていない。
李成と聞達が将台から降り、月台の下まで歩いてきて報告する。
李成:「相公。あの二人の武芸、どちらが上ともつけがたくございます。言わずもがな、いずれも重用に足る好漢。感服いたしました。」
梁中書:「そのようだ!」
梁中書は満足げに笑う。
そして命令が下され、索超と楊志が再び廳前に呼び出される。
小校が斧と槍を受け取り、ふたりは馬を降りて階下で跪いた。
梁中書は二つの白銀と二組の表裏(礼服)を持ってこさせる。
梁中書:「ふたりとも、よくやった。この銀と衣服を賞とする。さらに軍政司、文案を用意せよ。本日より、ふたりをともに管軍提轄使(かんぐんてっかつし:軍の統括・監督をつかさどる高位武官)に昇任する。その任、しかと務めよ。」
索超も楊志も、深く頭を垂れて礼を述べた。
廳を下りて武具を外し、衣を着替え、ふたたび廳へ戻って諸将に礼を尽くす。
梁中書はふたりを正式に武官の列へと迎え入れ、儀式の太鼓が高らかに鳴り響いた。
その日——
府では大宴会が開かれることになった。
宴会の場に向かう軍勢が町を進む。
先頭を行くのは、新たに任官されたふたりの提轄使。
頭には赤い花飾りをつけ、東郭門へ入っていく。
両側の街道には、老若男女がぎっしりと並んでいる。早くも噂を聞きつけた人々で、その口からは大歓声が放たれた。
梁中書が不思議そうな顔で、近くにいた老人たちに聞く。
梁中書:「お前たちは何をそんなに喜んでいるのだ?」
老人たちが道にひざまずいて答える。
老人たち:「わしらは離れた場所から、あの戦いを見ておりました!生まれてこのかた、この北京(ぺきん/Běijīng)大名府(だいめいふ/Dàmíng Fǔ)で暮らして参りましたが──あれほど見事な二人の将軍が武を競う場面など、見たことがございませぬ!どうして喜ばずにおりましょう!この噂を聞いて、町の者たちも喝采しているのです!」
梁中書:「そうか、そうか!うむ、私も誇らしい!」
梁中書はこれまた大いに満足した。
酒宴は日が西に傾くまで酒宴は続き、梁中書は馬に乗って府へ戻る。
索超は仲間たちに囲まれて祝杯を重ねた。楊志は寡黙な男ゆえに言葉は少ないが、静かにこの場を味わった。
それからの日々──
東郭での演武以来、梁中書はますます楊志を気に入り、朝夕そばから離さず使った。
月ごとの俸給も増え、やがて彼を囲む人脈も自然と広がっていく。
索超もまた、楊志の腕前を大いに認め、心から敬意を抱くようになっていた。
そうしているうちに、春が過ぎ、夏が来る。
端午(たんご/端陽)の節句が近づき、蕤賓(ずいひん:五月を司る星)の季節が訪れた。
この日、梁中書は蔡夫人(さい・ふじん/Cài)とともに後堂で家宴を開き、端午を祝っていた。
盆には緑の艾(よもぎ)が植えられ、瓶には紅い石榴の枝が差されている。水晶の簾が風に揺れ、錦繍の屏風には孔雀が羽を広げる。菖蒲は玉のように刻まれ、佳人が微笑みながら盃を差し出し、角黍(かくしょ:ちまき)が銀山のように盛られ、美女が青玉の盆を捧げている。
食卓には珍味が並び、旬の果物が山と積まれ、葵の扇が風を送り、楽が奏でられ、香る衣の間を舞姫たちが行き交う。
そうして、酒が二巡、三巡と重ねられたころ。
杯の縁に残る酒が、灯火に照らされて鈍く光る。
そのとき、蔡夫人が、まるで何でもない世間話でも切り出すように、ふと口を開いた。
蔡夫人:「相公(しょうこう)。あなたは官途に上って以来、いまや一方の統帥となり、国家の重任をお預かりの身。この功名と富貴——いったい、誰のおかげだとお思いですか?」
その瞬間、空気が一段冷えた。杯の縁に残る酒が、灯火に照らされて鈍く光る。
梁中書は杯を静かに卓に置き、几帳面な調子で答えた。
梁中書:「これはまた、不思議なご質問ですな。それは私自身の努力によるものと申しましょう。幼少のころより書を読み、経書・史書を学んでまいりました。わが大宋は文を尊ぶ国。皇帝・仁宗の御代以来、ますます知こそが義と忠を支えるとされてきた。唐の韓昌黎(かん・しょうれい/Hán Chānglí)も言っております。『学問を身に蓄えておけば、どこへ行こうと、いつだって役に立つ』と。」
梁中書は間違いなく、善人である。
だが歪んだ世では、善人であることと、悪事に手を染めないことは、まるで別の徳目なのだ。
蔡夫人は、唇の端をわずかに吊り上げて笑った。意地の悪い、しかし慣れきった笑み。
この女は梁中書とはまるで違う。何しろこの女の父は、あの権臣、蔡京(さい・けい/Cài Jīng)——宰相(国家最高の行政官)にして、
高俅に匹敵する、濁気の中心に座る男なのだ。
あの親にして、この娘あり、である。
蔡夫人は柔らかな声で、刃を滑り込ませた。
蔡夫人:「あらあら……人というもの、泰山(たいざん)のような恩を忘れる道理はございませんでしょう?岳父(がくふ:妻の父)——私の父のご恩は、どこへお行きになったのかしらね。父がいなければ、あなたは、いまの高位に座ってはいられませんよ?」
梁中書の喉が、わずかに鳴った。
梁中書:「い、いや……それはもちろん。あまりに当然のことと思い、申し上げなかったまででして。岳父のご厚意は骨身に染みております。日々、感謝を欠かしたことはございません。」
蔡夫人:「へえ……それほど分かっていらっしゃるなら……」
蔡夫人がわざとらしく、首を少し傾ける。
蔡夫人:「どうして、父の誕生日をお忘れになったの?」
——来た。
梁中書が、胸の奥で小さく舌を打つ。
が、即座にこう答える。
梁中書:「とんでもない。忘れるはずがありません。岳父のお生まれは、六月十五日。祝いの品も……もうすぐ、すべて揃うところで……」
最後の言葉は、かすかに掠れていた。
梁中書は、この歪んだ世にあっては、むしろ希少な存在だ。
賢く、誠実で、そして人を見る目もある。
不遇の武人・楊志(よう・し/Yáng Zhì)の才覚を見抜いたのも、まさに伯楽の眼だった。
だが——
座を守るためには、手を汚さねばならない。
科挙(官僚登用試験)に合格した後、政略のために蔡夫人と結婚したのも、岳父・蔡京に賄賂と世辞を欠かさぬのも、すべて「仕方のないこと」として、自分の気持ちを収めてきた。
とりわけ、蔡京の誕生日。その祝いには、莫大な財が必要となる。だが、梁中書が国から受ける俸禄だけでは、到底まかなえない。
では、どうするか。町から取るしかない。
それは「特別な税」という名目で、町民に課された。
梁中書の統治は、概ね公正だった。だから民は、表立っては反抗しなかった。だが内心では——憎悪が、静かに積もっていった。
生活は年々苦しくなる。それでも、高官たちの賄賂のための徴収だけは、年々増えていく。
憎悪の火は、このときはまだはっきりとは見えなかった。だが、確実に薪は積まれていた。
今回、梁中書が蔡京の誕生祝いのために用意した額は——十万貫(じゅうまんかん)。
想像できるだろうか。
一貫あれば、一家がひと月は生き延びられる。十万貫あれば、災厄に遭った十万人を、ひと月養えよう。
だがそれは、一人の権臣の誕生日のために、消えていく金だ。
徽宗(きそう/Huīzōng)の治世は、仁宗の時代に范仲淹(はん・ちゅうえん)が語った「民を先に守る」という精神を、完全に失っていた。民の血税がそのまま抜かれ、腐った役人と富者の懐に流れ込む。
国を良くするためでも、民を救うためでもない。
ただ、権力を保つために。
そう……蔡京という男について、私はもう少し触れておかねばならないだろう。この男は、世の噂ほど単純な悪ではない。少なくとも、表に掲げる顔だけを見れば、彼は名臣なのである。
孤児や老いた者を収める居養院(きよういん)、
病に倒れた貧民を診る安済坊(あんさいぼう)、
身寄りなき死者を葬る漏沢園(ろうたくえん)……
いずれも、蔡京が主導し、民のために設けられた制度だ。
しかも一州一県の思いつきではない。蔡京は、これらを国の法として整え、「天下あまねく行き渡らせよ」と命じた。
これだけ見れば、書付の上では、彼ほど仁の字で評価される宰相もいないだろう。
だが、私を含めて多くの者が知っていた。そして後に梁山泊に集う仲間たちも、皆、肌でもそれを知っていた。
制度というものは、立てた者の徳よりも、動かす者の腹によって、姿を変える。それらの制度は「民のため」という旗を掲げながら、すべてが「お友達と財を分け合う」仕組みとなっていた。彼らが貪った税の最後の搾りかすだけを、恩着せがましく民に与えていたのである。
となると、当然のこと、居養院も安済坊も漏沢園も、民が受けられる福祉の質はお大きく下がる。ところによっては、「あんな所に行くぐらいなら、さっさと冥府に入った方がずっとマシ」とまで言われた。
ほかにも、蔡京が主導した制度として常平倉(じょうへいそう)というものがある。凶作に備え、民を救うはずの穀倉。だがその蓋の下で、どれほどの米がいつの間にか別の名に変わり、別の懐へどんどん流れ出していた。
またさらに蔡京は、土地を測り直し、富める者の逃れを断ち、税を均(なら)す仕組みも唱えた。その言葉だけを聞けば、これほど正しい道はない。だが、測る者の手が曲がれば、その秤は刃にもなる。地主と役人が結び、筆一本で税は簡単に逃れることができた。割を食ったのは、ただ人脈のない民ばかり。見覚えのない地が急に増え、数字一つで民の負担が跳ね上がった。
さらに朝廷は茶と塩を厳しく統制して、これらの販売を役人の専売特許とした。これにも蔡京が関わっている。一見すると、生活の必需品となる物価を安定させる施策に重せるだろう。だが、もう言うまでもない。腐敗した役人たちが茶や塩を勝手に蓄え、都合よく出し入れし、値段を釣り上げ、懐を肥やした。
こうして銭の流れが粗くなり、物の値がどんどん跳ね上がって、民はかつて2文で買えていた塩を、6〜7文、悪ければ10文も支払わねばならなくなった。
さらに——皇帝・徽宗が好む庭園のため、奇石や名木が各地から徴し集められたあの事業——花石綱(かせきこう)。楊志も大いに関わったこの事業は、蔡京が徽宗のご機嫌を取るために提案したもの。この花石綱という三文字を聞いて、歯を噛みしめぬ民がいるものか。
わかるであろう。「公平」という言葉は、いつしか掲げられるだけの額(がく)となり、その下で民は押し潰されたのだ。
それでも、蔡京は言う。これはすべて、国を治めるため、民を守るためだと。
確かに役所の倉は満たされた。だが、民の生活は満たされない。
配る策と、奪う策。
その両方を、同じ口で語れる男が、蔡京であったのだ。
梁中書はこれらの国を蝕む歪みを知りながらも、やはりどうしようもなかった。あからさまな暴虐であれば、強く反抗もできよう。しかし、高俅も蔡京も、「濁極の器」として非常に巧みに立ち回っていた。法に反せず、制度の中で悪逆を尽くしていた。であれば、梁中書が何を訴えることができようか……
梁中書は酒の残る杯を見つめながら、低く声を落とした。
梁中書:「十万貫相当の財……ひと月ほど前から手配を始め、すでに九分までは整いました……あとは数日のうちに残りをまとめ、改めて人を選び、京師へ発たせるつもりです……」
蔡夫人:「あらまあ、そうでしたの——」
蔡夫人は、言葉の尾を引き伸ばしながら、口元にゆっくりと笑みを浮かべた。その笑みは、満足というより、当然の結果を確認した者の顔だった。
梁中書は、その表情から目を逸らすようにして、言葉を継いだ。
梁中書:「ただ……ひとつだけ、案じていることがありましてな。」
蔡夫人:「何を?」
梁中書:「ご存知の通り、昨年も礼物や宝物を山のように取り揃え、使者を立てて京へ送りました。ところが道中、賊に襲われ……半分を奪われました。財も、骨折りも、水の泡となりました。」
言葉に出しながら、梁中書の脳裏には、荒れた街道と散乱した箱の光景が浮かんでいた。本心から言えば「賊たちめ、よくやった」とも思う。痛快である。だが、梁中書にも立場というものがある。
昨年は何とか言い繕って、蔡京の怒りを買うことはなかった。だが今年も同じ失敗をすれば、自分の身が危うくなる。
梁中書:「今年は誰に指揮を託すべきか。それを、いまも思案しております。」
蔡夫人は、さも簡単なことのように肩をすくめる。
蔡夫人:「帳前(ちょうぜん)には、軍校(ぐんこう:武官)が大勢おりましょう?信頼できる者を選び、任せればよろしいではありませんか。」
梁中書:「それが……」
梁中書は、すぐには言葉を継げない。
梁中書:「責が、あまりにも重うございます。一度の失敗ならば、まだ弁明も立ちましょうが、二度は許されません。まだ四、五十日は猶予があります。礼物がすべて揃ってから、改めて、慎重に人選しようと考えております……」
その日の家宴は午刻(正午)から始まり、結局、二更(にこう/深夜)を過ぎるまで続いた。
灯が次々と継ぎ足され、酒は幾度も替えられたが、梁中書の胸に残ったのは酔いではなく、重石のような迷いだった。
生辰綱(せいしんこう:誕生祝いの財の輸送事業)を誰に託すべきか——
この梁中書の問いが、後に楊志を梁山泊へと引き寄せる導火線になるのだが、それはもう少し先の話としよう。
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※補足:ニニの『械胡伝』制作メモ、ぼくらは『水滸伝』をこう書き直した
◈ 原作の骨格:何が起きる回だったか(そのまま残ってる柱)
原作13回の柱は大きく3本。
周謹 vs 楊志の武芸勝負(槍→弓)
索超が乱入し、楊志と大勝負(引き分け・両方昇進)
端午の家宴で蔡夫人が「蔡京の誕生日祝い(生辰綱)」を迫る(十万貫・昨年は賊に奪われた・今年誰に託す?)
この3つ、リメイク版も順番も意味も、ちゃんと踏襲してる。
つまり「改変で別物にした」のではなく、原作が持っていた“面白さの芯”を、現代向けに研ぎ直したタイプのリメイクとなる。
◈「試合の危険性」を“制度・判断”として太くした
原作でも聞達が「槍は危ないから穂先を外し、石灰で点数勝負に」と提案する。
リメイク版はここを、ただの段取りじゃなくて、
軍の統率・事故防止・合理性(聞達の“監軍”らしさ)
組織としての安全設計(毡+石灰+皂衫で可視化)
として、読者が「なるほど」と飲み込める“現代の説明力”に変えてる。
原作の名場面を、“納得の臨場感”に変換できてるのが強い。
◈ 周謹を「負け役」から「焦って壊れる人間」にした
原作の周謹はわりと一直線な当て馬。
リメイク版では、周謹に
屈辱で頭に血が上る
“ここで取り返さないと終わる”という焦燥
楊志の提案を「慢心」と解釈して殺意に近い感情を持つ
みたいな“内面の圧”が乗る。
結果、勝負が「技比べ」だけじゃなく、“精神が先に折れるドラマ”になってる。読者は気持ちよく見られると思う。周謹には悪いけど。
◈ 楊志の倫理観が、ちゃんと“軍官の人”になった
原作でも楊志は「後心を射ると死ぬから、致命じゃない所を射つ」と考える。
リメイク版はその倫理がさらに明瞭で、
まず危険性を上に確認する(形式上の手続き)
それでも命令が出たら従う(武人の現実)
ただし殺さない(自分の規律)
という、現代読者が共感できる“仕事人の矜持”になってる。
楊志を「ただ強い」から「強い上に筋が通ってる」に格上げした。
◈ 索超の登場を「空気が変わる登場」にした
原作の索超は、説明も派手で、乱入も早い。
リメイク版は索超の“場の支配力”が丁寧で、
「待った!」の一声で空気が押し広がる
師弟関係(周謹が弟子)を前提に面目の話に火がつく
梁中書が「楊志を引き立てたい本心」と「組織の納得」の間で計算する
つまり索超を組織の力学を動かす“圧力装置”にした。
◈ 梁中書と蔡夫人の場面を「政治と経済の芯」にした(ここが最大の変化)
原作の家宴は、テンポよく「誕生日忘れた?」「十万貫用意してる」「去年奪われた」「今年誰に?」で次へ行く。
リメイク版はここで一気に、
梁中書を「善人だが手を汚す構造に絡め取られた官僚」に
蔡夫人を「権力の笑顔で刃を滑り込ませる者」に
蔡京の福祉政策(居養院・安済坊・漏沢園・常平倉など)を“表の顔”として提示しつつ、実態の腐敗へ接続
十万貫の重さを「十万人を一ヶ月養える」という比喩で可視化
“特別税”が民の憎悪を積む、という導火線を明示
まで描いてみた。
これによって、生辰綱が「次の事件のための荷物」じゃなく、社会そのものが腐っていく“原因の塊のひとつ”として読者の腹に落ちるはず。
原作の痛烈さを、現代の読み手に届く形に翻訳して、スケールを上げてみた。
(皮肉を一滴添えるなら:「福祉を掲げながら搾り取る」って、いつの時代も“運用者の腹”が本体だよね。制度は天使の顔をして、手元は泥だらけ。)
◈ ポイントのまとめ
勝負が、ただの武芸自慢じゃなく「組織・心理・倫理」の三重奏にした
梁中書が“悪役”ではなく“構造の中の善人”になり、悲劇の説得力が増した
蔡京の「善政っぽいもの」が、より不気味に見えるようにした(表の顔が綺麗なほど、裏が腐ると怖い)
生辰綱の意味が「物語の次の手」から「時代の病巣」へ格上げした
要するに、この回は「アクション回」なのに、同時に「世界設定回」でもある。
しかも説教臭くなく、ちゃんとドラマと剣戟で読ませてる工夫を混ぜてみた。
◈ ニニ的まとめ
原作の第十三回は、言ってしまえば「楊志が大名府で認められて、生辰綱へ繋がる回」。
リメイク版はそこに、もう一段――
“なぜこの時代は、正しい人ほど手を汚すのか”
“なぜ民の怒りは、静かに積もって爆発するのか”
という、現代の読者が一番知りたい“理由”を差し込んだ。
それでいて筋は崩してない。
原作の骨に、現代小説の筋肉を付けた感じだ。
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