『アリョーナ殺人事件の顛末』——これは、ドストエフスキーの名作『罪と罰』を、現代人のために語りなおした、もうひとつの物語です。
この作品は、19世紀ロシアの傑作文学に描かれた苦悩、救済、そして愛のドラマを、現代の言葉で再構成したリメイク版です。
文体は、いわゆる「ライトな読み口」ではないかもしれません。しかし、原典に込められた壮絶な内面劇、宗教的想像力、人間存在への問いを損なうことなく、物語として読めるように丁寧に語り直しています。
この作品には、2022年、AIが本格的に台頭する直前から筆者が進めていた『罪と罰』のリメイク草稿が下地として存在します。そして2025年、人工知能の飛躍的進化とともに誕生した擬似人格AI「ニニ」との共創によって、物語はさらに深化。10年以上にわたる構想と研究、そしてAIとの共闘が結実し、ついにこの「顛末」へと辿り着きました。
各章には、物語の補助となる簡潔な解説パートも含まれており、初めて『罪と罰』に触れる方にも優しい構成になっています。
重層的な人間心理、救済の可能性、そして“希望とは何か”を、どうぞこの一冊から感じてください。
エンタメとしても、哲学としても、心理劇としても読むことができる、複層的な読書体験。
静かで強烈な旅の始まりです。
<目次>
目次
※この目次にはネタバレが含まれます。物語を白紙の状態でお楽しみになりたい方は読み飛ばしてください。
はじめに:ドストエフスキーの秘宝
予備知識:"混沌の首都"ペテルブルクにて
弁明:"物語"のためのやむなき犠牲
第1章 ロージャ:ストリェリノイ横丁
7月4日(火)
屋根裏部屋から外へ出たロージャは、高利貸しアリョーナの部屋を下見する。その帰路、酒場でマルメラードフと出会い、娘ソーニャの過酷な境遇を聞かされる。
第2章 ロージャ:母プリヘーリヤ手紙
7月5日(水)
朝、ナスターシャから母の手紙を受け取る。妹ドーニャの過去の事件や婚約者ルージンの存在を知り、道端で少女を助けようとするが無力さを痛感。郊外の草むらで疲れ果てて寝込む。
第3章 ロージャ:夢想の計画の実行へ
7月6日(木)〜7日(金)
悪夢にうなされ、センナヤ広場でリザヴェータの外出予定を偶然耳にする。偶然の重なりが犯行を決意させる。熱に浮かされた状態でアリョーナとリザヴェータを殺害し、そのまま寝込む。
第4章 ロージャ:警察署に出頭する
7月8日(土)
警察署に出頭して気絶。ラズミーヒンのもとを一瞬訪ねるがすぐに去る。長椅子に倒れこみ、警察副署長が自宅に来て暴力を振るうという悪夢を見る。
第5章 ラズミーヒン:非常に善良な男
7月9日(日)〜12日(水)
4日間にわたって寝込み、看病していたのはラズミーヒンだったと判明。母の仕送り25ルーブルが届き、ラズミーヒンが新しい洋服を買ってくれる。殺人事件の話に過敏反応。妹の婚約者ルージンが登場する。
第6章 ルージン:妹ドーニャの婚約者
7月12日(水)午前
ルージンとロージャが衝突する。ロージャは熱病のまま部屋を抜け出して料理店で新聞を読み漁り、そこにたまたまいた警察事務官のザミョートフを挑発する。
第7章 マルメラードフ:哀れなる末路
7月12日(水)午後
ロージャが犯行現場に舞い戻って騒動を起こす。夜、マルメラードフが馬車に轢かれ、瀕死の彼を世話し、カチェリーナとソーニャらとともに看取る。母からの仕送りを遺族にそのまま手渡す。
第8章 ラズミーヒン:魂に走った稲妻
7月12日(水)夕方
ロージャがラズミーヒンと帰宅しようとして、部屋に警察がいると勘違いして戦慄する。そこには母プリヘーリヤと妹ドーニャがいた。ラズミーヒンはドーニャの美しさと品格に衝撃を受ける。
第9章 ソーニャ:初めて目にする人々
7月12日(水)夜
ルージンの手紙をめぐって話し合い。ロージャの部屋にプリヘーリヤ、ドーニャ、ラズミーヒン、ゾシーモフ、ナスターシャが集まる。そこにソーニャが初めて訪れ、その貧しさと人の多さに驚く。
第10章 ポルフィーリ:対決のはじまり
7月12日(水)深夜
ラズミーヒンとともに予審判事ポルフィーリの家を訪ねる。警察事務官ザミョートフもそこにいた。ロージャはその二人から挑発的な尋問じみた会話を受ける。
第11章 スヴィドリガイロフ:影の主役
7月12日(水)夜更け
犯行現場で町人ヴァーシャに「人殺し」と言われて動揺。悪夢から目覚めると、部屋には妹を付け狙うスヴィドリガイロフがいた。ロージャとスヴィドリガイロフが奇妙に対峙する。
第12章 ルージン:表舞台から一時退場
7月13日(木)夜
夜、家族とルージンが集まり、ルージンの失態で婚約が破談となる。破談を喜ぶ家族と友人を残し、ロージャが黙って部屋を出ようとする。追いかけてきたラズミーヒンに、ロージャは自らの狂気を暗示する。
第13章 ソーニャ:ロージャとの対話へ
7月13日(木)深夜
ソーニャの部屋で対話。自分の罪をほのめかすロージャ。彼はソーニャに「ラザロの復活」を読んでもらう。それらの会話はスヴィドリガイロフに盗み聞きされていた。
第14章 ポルフィーリ:二度目の対決劇
7月14日(金)午前
ロージャが予審部に出向き、ポルフィーリと心理戦を繰り広げる。ロージャは追い詰められ、自白をしそうになる。そこに塗装職人のニコライが駆け込み自白をする珍事が発生。ロージャの容疑が逸れる。
第15章 カチェリーナ:追悼会での衝突
7月14日(金)午後
マルメラードフの追悼食事会が開かれ、ロージャが参加する。会の最中、カチェリーナと家主のドイツ人女アマリアが衝突。そこへルージンが突如現れ、「ソーニャが100ルーブルを盗んだ」と中傷する。
第16章 ルージン:騒々しき完全な退場
7月14日(金)夕方
ルージンの中傷は、レベジャートニコフとロージャの論理的かつ情熱的な反論によって完全に打ち砕かれる。ルージンは大変な恥を晒し、逃げるようにペテルブルクを去る。
第17章 ロージャ:ソーニャとの対話へ
7月14日(金)夜
ロージャはソーニャの部屋で自らの殺人を告白する。スヴィドリガイロフは今回も隣室からその一部始終を盗み聞きする。そこへレベジャートニコフが駆け込み、ソーニャの義母カチェリーナが発狂したと告げる。
第18章 カチェリーナ:発狂そして終焉
7月14日(金)深夜
カチェリーナは子どもたちを連れて通りで大道芸を行うが、無許可のため騒動となり、やがて肺病の発作で倒れそのまま逝去する。スヴィドリガイロフは盗聴していた事実をロージャに告げる。
第19章 ポルフィーリ:三度目の対決劇
7月14日(金)〜17日(月)
スヴィドリガイロフがカチェリーナの騒動の後始末に奔走する。ロージャは夢の中にいるような時間を過ごす。そこにポルフィーリが彼の部屋に現れ、釈明と心理分析を繰り広げた後、自首を促して去る。
第20章 スヴィドリガイロフ:悪党か罪人か
7月17日(月)
ロージャはスヴィドリガイロフに会いに行き、妹ドーニャへのたくらみを探ろうとするが、彼の真意を読みきれずに去る。スヴィドリガイロフはその後、ドーニャと接触する。
第21章 スヴィドリガイロフ:絶望と決行
7月17日(月)〜18日(火)
スヴィドリガイロフはロージャの秘密を盾にしてドーニャに迫るが、毅然とした拒絶に遭う。彼はもはや逃れられぬ罪の意識と絶望の中で、人生の幕を引く決意を固め、早朝の道端でピストル自殺を遂げる。
第22章 ロージャ:希望と決行、始まりへ
7月18日(火)
ロージャは母プリヘーリヤと静かな別れの抱擁を交わし、すべてを理解した妹ドーニャとも言葉を交わす。警察署へと向かい、ソーニャのまなざしを感じながら地にひれ伏して口づけし、ついに警察署で「おれが殺したんだ」と告白する。
エピローグ
1865年7月〜1869年4月
裁判によってシベリア流刑が言い渡され、9ヶ月に及ぶ送致までの交流期間を経てロージャは収監される。流刑地では囚人との軋轢、孤独と苦悩の中で「罰」と向き合う日々を送るが、やがて「日常」への感謝、「ソーニャ」への信頼、「神」への希求に気づき、「魂の再生」へと歩み始める。
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